【(有)丸高製帽所】今では珍しくなった麦わら帽子作りの現場へ

【(有)丸高製帽所】今では珍しくなった麦わら帽子作りの現場へ

丸高製帽所

昭和39年の創業以来、香川県観音寺市にて帽子を作り続けている会社があります。「丸高製帽所」さんです。
創業当時は麦わら帽子を製造していましたが、数年後には布の帽子も作り始め、現在は、布製の帽子と男性向け麦わら帽子が全体製造量の99%を占めています。

その昔、香川県には麦わら帽子を製造する会社が十数軒ありました。しかし、ここ10年程、国外からの帽子の輸入が増えた関係で、以前は製造をしていた会社も多くが問屋になっていったそうです。
現在も帽子を作り続けている会社は香川県内では数軒程度。四国を見渡しても数は少なく、香川県外では愛媛県に1軒のみです。

私たちがよく目にする帽子は、ベトナム製・中国製といった外国製がほとんどです。
そんな中、丸高製帽所さんは今も香川県で帽子を作り続けています。
実は直接小売店へはほとんど商品を卸しておらず、栗林庵で丸高製帽所さんの帽子が買えるのは貴重です。

丸高製帽所

帽子を作る際は、毎年、メーカーや問屋さんと意見をすり合わせながら作り上げるそうですが、専任のデザイナーがいないメーカーには、希望をもとに丸高製帽所さんから提案を行うこともあります。
抱えきれない程の膨大な生地見本から素材を選び、デザインを提案し、相手の希望に合わせて作り上げていきます。
デザインを考える時には、その年人気の帽子のデザインや女性ファッション誌なども参考にしながら、流行の色も取り入れてデザインしていくそうです。

長年帽子を作り続けていると、昔に比べると男の人も女の人もサイズが小さくなっていることを実感されるそうです。
また、日照時間や気温などの関係でしょうか。東京より北にいくと帽子のつばが短く、関西・四国・九州では帽子のつばが大きく広いものが好まれるそうです。

丸高製帽所

麦わら自体は100%が海外、そのうち90%が中国のもの。昔は香川県内外でも小麦の茎を手で編んでいる光景がいたるところで見られたそうですが、今となっては麦わらを日本で作るところはほぼないそうです。

小麦の茎を編み、一本の長い紐状になったものを丸高製帽所さんが帽子の形に編んでいきます。麦わらの編み目が細かいほうが帽子自体も高価になるのだとか。
現在も帽子づくりに使われているミシンの中には、麦わら帽子専用のミシンもあり、そのミシンはなんと100年以上使われている年代物。しかし、今では製造メーカーがなく、もしも壊れてしまったら、部品から自分たちで作らなければいけないそうです。

ただし、麦わら帽子と一口に言っても価格帯もとても幅広いため、手頃な価格帯のものは、すでに帽子の形になったものを仕入れ、成型をするというように、商品によって製法を変えています。

形ができあがった麦わら帽子は、プレス機にかけます。このプレス機の金属部分を変えることで中折れ帽子、カンカン帽など、帽子の形が決まります。
つまり、帽子の数だけプレス機の型枠も存在します。しかしこの型枠を作る会社も、今では日本で1軒だけ。
帽子づくりを支える機械たちも貴重なものになっています。

丸高製帽所
工場では、たくさんの帽子が出荷の時を待っています。

麦わら帽子と一口に言っても、藁や藁様の素材で編まれており、様々な素材が増えています。経皮(木の皮)やい草、最近では安くて軽いということから紙も増えています。

布製の帽子にも様々な生地が出ています。花粉対策の生地を使っていたり、徳島の藍染や高知の紬、岡山のデニムで帽子を作ったこともあるそうです。
こぼれ話として、約20年ほど前に、こすると匂いのする生地で帽子を作った時にはあまり売れなかった(笑)という逸話も教えてくれました。

夏や冬に使うイメージが多い帽子ですが、製造は1年中行っており、麦わら帽子の出荷は2~4月にピークを迎えます。
毎年7月にはもう翌年の麦わら帽子の見本を作り始め、9月にはその見本を持って営業に行くそうです。

丸高製帽所
帽子を彩るリボンも、帽子の形、素材、色に合わせて選びます。
丸高製帽所

麦わら帽子の素材によっては、とても柔らかいものもあります。
そういったものは、成型後に天然のニスにつけることにより、固く、型崩れしづらくなります。
このニス付けの作業は乾燥させる必要があるため、湿度が重要になってきます。そのため、梅雨の時期は毎日できる作業ではありません。
作業ができる時には1日に2度、この木のオブジェのように広がる枝に1つずつ干していきます。

帽子が好きな方の中には、新聞やテレビで丸高製帽所さんの存在を知り、直接工場に問い合わせをしたり、訪れる方もいるそうです。
それほど、国産の帽子作りは珍しくなっているのでしょう。
職人さんは1つ1つ丁寧に帽子を仕上げていきます。
丸高製帽所の皆さんから、帽子に対する愛情と情熱が伝わってきます。